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「傘、無いのか?」
玄関を出て空を仰いでいる私に声を掛けてきたのは、後ろの席の強面の彼。
話したこともない彼が、黒い大きな傘を広げて不機嫌に言う。
「入ってけ」
命令口調のそれを断れる人などいるのだろうか。
怯えながらも仕方無く彼の横に並ぶ。
「……ありがとう」
駅までの道、ずっとお互い無言のまま。
別に、入れてくれなくても良かったのに……。
そう思いながら歩いていて気が付いた。
あ……。
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