一体目 それが彼女だ

12/12
前へ
/171ページ
次へ
「な、なんと!?」  信じられないというように、彼は青ざめていた。  夢なら冷めてほしい、悪夢なら懺悔してでも悔い改める。  だから、この場から……    このいかれた女から…… 「そりゃ無理だよ」  モーニングスターのチェーンを切断したサーシャが目の前にいた。 「おじさんの業は私が持って行ってあげる。だから、安心して逝ってね」  黒髪の少女。  それが死に神に見える。  ゆっくりと死が近づいてきていた。  小柄な少女だ。  普通よりも少し痩せているように見える。  白い肌は所々傷跡があった。決して、美しいと言えるような肌ではない。  そして、彼を絶望……いや恐怖にたたき落としたのは、彼女の少し長い前髪の奥にあるえぐられた眼窩だった。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加