二体目 炎刃

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 建物の周辺には、どこよりも濃密な数の無法者たちがいた。 「ちょっとどいてくれ」  その無法者達をかき分けるようにして彼は進む。  かき分けるたびに異臭で鼻が曲がりそうだった。  苛立ちだけが彼に溜まっていった。だが、それでも今までの経験が、彼に正しい選択を行わせていく。たった少しの感情の乱れだけでは、彼は目的を見失ったりはしない。  そして、現れる黒い扉。  木製の建物なのに、扉だけが威圧するかのような金属で出来ていた。  観音開きの扉の中央……そこに蛇が鳥を補食しようとしているモチーフが彫られていた。  弱肉強食  すべての理にして、自然界の絶対的なルール。  彼はそれをにらみつけ、ゆっくりとその扉を開けていった。  中に入り込んだ彼は大きく息を吸い込んだ。    外にいる連中とは比べものにならにほどの強者がそこでたむろしていた。  ここは、冒険者や傭兵達が利用する職安所だった。
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