二体目 炎刃

9/21
前へ
/171ページ
次へ
 部屋としては問題ない。そういう問題ではなく、ここだけ人がいないのだ。古強者たちでごった返しているこの部屋のなかでだ……  ここにいるのはたった一人だけ……  それも笑っている娘が椅子に腰掛けているだけだった。  だが、誰も彼女に近づこうとはしない。  まるで彼女がそこに存在しないかのように振る舞っている。  そんな彼女に彼は近づいていく。 「……ちょっといいかい?」 「はい」  彼の呼びかけに反応した。  それだけで、周りの空気が少し変わる。 「あれ? 君は……」  彼女は不思議そうに顔を上げた。  全体的に短めの黒髪。だが、一部だけは異様に長い……  すっぽりと覆うように目元が黒髪で隠れている。さらに鼻先に見えるそれと、微かに間からのぞかせるものはピエロの仮面か?  口元だけが見え、楽しそうな笑みだけが作られていた。 「探したぞ、サーシャ」  彼は目標を見つけた。                 ・
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加