32人が本棚に入れています
本棚に追加
ベルヌは心配などしていなかった。
元々、相手はこの付近を荒らしているただの野盗だった。田舎ということ、そしてアジトがこんな山奥であり、何カ所かあるようで尻尾がつかみにくく、討伐しようにも面倒な状態にあった。
それだけなのに、彼らは周りが自分たちに恐れをなして討伐されないと思い込んでしまったようだ。
行為はエスカレートしていき、末には僻地とはいえ、公爵の荷馬車を襲ってしまったのだ。これが公爵の逆鱗に触れた。討伐隊を組織しようとしたが、先のクーデター騒ぎで兵たちもまだ疲弊していた。
だからベルヌのような傭兵たちに声がかかった。
ただそれだけのことだ。
ちょうど公爵が納める領土に来ていたベルヌは、昔の杵柄もあり声を掛けられた。だからこそ、相棒であるサーシャを連れて引き受けた。公爵家からの直々の依頼なため、報酬もいい。文句のつけようもない取引だ。
もっとも、公爵はほかにも人を集めていたようで、一緒に行く羽目になった二人の男はあまり役に立ちそうにもなかった。
だから期待しない。
ただ、二人が死ぬような状況となれば、隊の責任を任されたベルヌの評価が微妙になる。
今後いろいろなところで仕事をしていきたいのに、公爵からの評価を下げるわけにはいかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!