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「全く、俺の分も残しておけよ……」
先行したサーシャを追うために、彼女と同じように彼も崖を駆け下りるように加速する。
あっという間に二人の男を抜き、眼下に迫る光景をにらみつけた。
彼女は手際よく、目が見えなくなっている野盗たちを片付けていった。その光景を見ながらベルヌは嘆息する。
後処理だけほど、つまらないものはない。
彼もまた、サーシャと同じく戦うことが大好きな人間だった。
「さて、仕事っと」
彼は短く呪を唱えた。
瞬間、指先にこぶし大の水が生まれる。彼はそれを払うような仕草で飛ばした。
水は矢のように飛び、のたうっている野盗の首を打ち抜いていった。
そして、サーシャと同じ術を使い、何事もなく着地した。
「やれやれ……」
彼は大きく嘆息した。
なぜなら、周りは血の海。
すでに半数ほどの野盗が死んでいる。
仕事が本当に早くて感心してしまう。
とはいえ、少しずつ彼らも回復してきている。
困惑から、怒りへ、その矛先は炎を背に悠然と立つベルヌへと向けられた。
「こいよ、遊んでやるからよ?」
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