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なるべく事務的になるように、と願いながら一気に話した。
秋山は黙って話を聞くと、京香を励ますように大きく頷いた。
「わかった。……それはオレの方でも気をつけて見ておくよ」
「じゃ、さっさと終わらせてしまいたいので、業務に戻りますね」
「あの、五十嵐」
「はい?」
「今日、終わってから一杯飲みに行かないか。詳しい話はその時にでも」
「……わかりました」
これ以上、秋山の前にいたら涙がこぼれてしまいそうだ……
京香はそそくさと自分の席に戻り、さっさと引き継ぎのための資料をまとめ始めた。
長居は無用だ。
長くいればいるほど惨めになる。
京香は大急ぎで必要最低限の業務だけ済ませて、挨拶もそこそこに逃げるように備品室へ向かった。
地上12階から地下1階へ。
入社して初めて降りるそこは、薄暗く生気のない負のオーラに包まれたイヤーな場所だった。
うろうろしながら備品課を探す。
フロアの片隅に取って付けられたような一角に備品課はあった。
机を8台ほど寄せて一つの島を作っている。5人の人が席についており、皆、新聞を読んだりスマホをいじったり適当にヒマを潰しているように見えた。
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