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空いている机の一つにパソコンが置かれている。
京香のことを気に留めているらしい人は見当たらなかった。
「本日付けで異動になりました五十嵐京香と申しますが……」
仕方がないので、京香は近くの席に座っている人に声をかける。
京香に声をかけられたその人は、眠そうな目を京香に向けた。
「ふーん」
「あの……何か聞いていないでしょうか?」
「いや、別に」
「あの、課長は?」
「あー課長は、3階だよ」
「いつお戻りになられますか?」
「さあ……今日、こっちに来ないんじゃない」
事情がよく飲み込めないでいるとそのおじさんは説明してくれた。
「備品課の課長は不動産課と兼任だから。
普段は課長は不動産課にいるんだ。ここにいてもやることないから」
「……」
備品課は、リストラ対象の社員が飛ばされる場所だ、という伝説がまことしやかに流れていたが、さもありなん。
課長からして部署にいないんじゃ話にならない。
「あの、私はどこに座ればいいんでしょうか」
「あー、適当に空いてる机を使ってくれればいいよ、どうせ仕事なんてないんだから」
「……」
ーーこの投げやりな空気はなんなんだ!?
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