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嘆いていても仕方ないので、京香はとりあえず空いている机に私物を片付け、自分の席を作った。
隣りの席の男に声をかける。
「あの、何をやればいいでしょうか?」
「そこのパソコンチェックしてみてー。 何か備品の請求が来てたら対応するから」
言われた通りパソコンを見ると、秘書課からコピー用紙の請求が上がってきている。
「あの、なんかコピー用紙の請求が来てるみたいですけど」
「あ、じゃあ、倉庫から取ってきて秘書課に届けてくれる?」
「……はい、わかりました」
備品室にある台車にコピー用紙を2箱載せて秘書課に届ける。
それから在庫をチェックしてオンラインでボールペンを2ケースオーダーした。
午後3時。
隣りの席の内田さんが「そろそろお茶にするかー」とちらと京香を一瞥して独り言のように呟く。
京香が無視していると、内田さんは今度ははっきりと京香を見て言った。
「お茶が飲みたい、って言ってるんだけど」
「……」
京香は無言で立ち上がって給湯室を目指す。
急須に熱湯をじゃーと淹れていたら、ふつふつと怒りがわいてきた。
京香は、入社してから今まで一度もお茶など入れたことがない。
それは、昭和の時代の古き慣習だとばかり思っていた。
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