異変

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今時、お茶を入れるのは、飲みたい人が自分で淹れるか、派遣で来ている雑用係りがやるような任務と決まっている。 そもそも、ペットボトルを買ってくれば済む話ではないか。 3時のおやつにお茶の用意なんて、正社員の、それも総合職の人がやるような仕事ではない。 少なくとも、京香が入社した時から、そのような雰囲気で、それが当たり前だと思っていたから、内田さんから催促された時は意味がわからなかった。 京香は、今まで財務管理部という社の中枢で、男性と同様にバリバリと働いてきた。 同期にひけを取らないだけの仕事をしてきたし、そのように評価されてきた、という自負もある。 それなのに、いきなり理由もわからず、お荷物のような部署に飛ばされて、いきなりお茶汲みを命じられるとは! 初めてのことで戸惑いながらお茶を淹れると内田さんに渋い顔で言われた。 「東大出てても、お茶の一つも満足に淹れられないとはね。  茶菓子はないの」 そういう内田さんは、京香が茶を淹れている間に何をしていたというのだろうか。 ぶすっとした顔で、新聞など読んでいたのではないか。 内田氏が仕事らしい仕事をしている気配は全くなかった。
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