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「……ありがたいことです」
ーーそう……なんだろうか?
心中なにか腑に落ちないような、奇妙な引っかかりも感じる。
ーーなんだろう、このモヤモヤする気持ち。
納得がいかない辞令に疑心暗鬼になっているだけ?
自分で自分に問うてみても、京香自身、答えが出せないでいた。
秋山は静かに京香の手に自分の手を重ねてくる。
まるで励ましてくれているようなその手のぬくもりを感じて、京香は思い切って胸の内を秋山に吐き出した。
「でも……拓人さん。 変じゃありませんか?」
「変?」
「明らかな懲罰人事ですよね、これ。
なのに、部長は何も説明されなかったんですよ?」
「だから、ショックだったんじゃないかな、部長も」
「そうなんでしょうか? 何か、私に言えない事情とかあったのかも」
「そんな事情なんてあるわけないだろうーー第一、五十嵐はよくやってたじゃないか、そもそも懲罰人事なんてことがあるわけないだろう。
気になるのはわかるけどさ、くよくよ悩んでも仕方がないんじゃない。
気を取り直してしばらく総務にいるのもいい経験になると思うんだけどな」
ーーいい経験?
ロクに仕事もないような部署でイヤミを言われながらお茶を淹れることが?
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