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「ふーん……」
京香はアツアツのお茶漬けをすすった。
どうも夢じゃないことは確かみたいだ。
ーーどうしてこうなった!?
歯車の狂った日常に呆然とするばかりの京香であった。
***
ビルの入り口でうっかり上行きのエレベータに乗りそうになって慌てる。
背筋をピンと伸ばして、颯爽とエレベータに乗り込む人たちを京香はぼんやり見送っていた。
おとといまでは確かにあの中の一人だったのに。
ポツンと下行きのエレベータを待っていると、気持ちも一緒に落ちていきそうだ。
はぁ、
京香は自分のデスクにある私物を眺めてため息をついた。
今までは、ざわざわとしたせわしない朝の慌ただしさの中、パソコンを立ち上げて、各事業部から上がってくる数字を見るところから京香の朝の仕事は始まっていた。
各事業部に問い合わせたり、管理課からの依頼に応じて財務状況を分析したり、多岐にわたる業務をこなしているうちにあっという間に一日が過ぎる。
それが、今では本社の備品管理。本社内で使用される備品を過不足なく準備しておく。
そして全国に7つある支社への備品の支給。と言っても、支社が必要に応じて備品を購入するので、本社から送るのは、社名入りの封筒、パンフレットぐらいなものだ。
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