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「……ちょ、京香さん、お願いだから! お願いだから落ち着いて!!」
「落ち着けるかっつーの! 脳の血管がブチ切れる前にとっとと失せやがれっっ!」
京香は我を忘れていた。
何か熱いものが胸の奥からツツーとこみ上げてきて、良太の顔がぼやける。
ーー何で私ばっかりこんな目に会うの!?
私がブスだから? 東大出たから? それとも女だから?
そんなのどうしようもないじゃなーーい!!
京香が良太に食ってかかろうとしたその時。
「ごめん、良太。遅くなっちゃって!
大丈夫?」
ハアハアと息を切らしながら甲高い声が聞こえてきた。
「……じゃないみたいね」
低い声で付け足す結衣。
ぐわっと襲いかからんばかりの形相の京香とリビングの惨状を一目見ると、何が起きたか瞬時に悟ったようだった。
結衣は、ピリピリした空気を感じ取ってかさっきから顔を真っ赤にさせて泣き出している杏を抱き上げてあやしている。
余裕を見せて赤ちゃんにゆったり笑う結衣はいつもにも増してキラキラと輝いているように見えた。
ピシッとしたスーツに、髪の毛を整え、メークも完璧。
眩しいぐらいに美しい。
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