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結衣はそれだけ言うと、さっさと支度をして杏を連れて帰って行った。
全然仕事が決まらない、か……
そりゃ、玉の輿狙いで腰掛け気分で働いてた女が、結婚して何も考えずに子どもを産んだのだから仕方のない話だ。
京香のように、しっかり勉強して、結婚や子どもに逃げ込むなんてことをせずにきちんとしたキャリアを積み上げようとすれば良かったのに。
ちょっと可愛くて男にチヤホヤされてたからっていい気になってた罰だ。
ーーそう、自業自得。
それでアカの他人に迷惑かけるなんて言語道断……でしょ?
誰に対して同意を求めたくなったのだろう?
しばらく無言だった良太がようやく口を開いた。
「……ごめんね。勝手に連れてきちゃって。
ホント、ゴメン。 なんか姉ちゃんほっとけなくてさ」
「ごめんで済むか」
「え?」
尖った声音に良太は当惑した顔で京香を見返した。
「仕事を探そうってのに、甘いんじゃない?」
「そ、そうなのかな」
「そうでしょ。仕事なんだからさ、無理言われたってやらなくちゃいけないし、仕事を理由に子供を他人に押し付けて迷惑かけるのもおかしくない!?
私だって、やりたくもない仕事だって我慢してやってるわけだし。
どうして結衣のわがままばっかり通るわけ?」
「わがまま?」
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