573人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かに、京香さんは強くて優秀で先のことも全部完璧に計画できて、失敗なんて絶対しないから、困ったことなんて起きないんだろうけどさ。
だから自分のこと『だけ』考えてればいいんだ。独りで生きていくんだし?」
ーー何、この言い方。
良太のクセに。子犬のクセに。犬なんて黙ってご主人様の言うこと聞くだけが存在価値なんじゃないの!?
良太は悲しそうに首を振った。
「京香さんは他人には決して迷惑をかけない。今までもこれからも。
だから、迷惑をかけるような人とは一切付き合えない、付き合うつもりもない、お荷物なだけ……ってことなんだよね」
「アンタがグータラで自分のことだって何一つまともにできないのが悪いんでしょ」
「……そっか。わかった。 メーワクばっかりでゴメンね。
今までいろいろありがとう」
良太はそれだけ言うとふらりと家を出て行った。
パタンとドアが閉まる。
静寂に包まれた部屋は、急に広くなったように思えた。
……
…………
ーーあれ? 良太、今、出て行った?
京香が我に返ったのは30分以上経ってからだった。
部屋の中をうろうろと歩き回る。
最初のコメントを投稿しよう!