573人が本棚に入れています
本棚に追加
***
次の日の朝。
ジリリリリといつもと変わらない音を立てる目覚まし時計。
布団から手をにゅっと伸ばしてベルを止める。
「……仕方ない、おきますか」
京香はひとり言をつぶやいて、背筋をグーンと伸ばす。
ベッドから抜け出して、キッチンに向かった。
……
…………
物音一つしない静かなマンション。
昨日までは、ガシャンだのドゴンだの朝っぱらから良太がハデにキッチンを散らかす音がしたり、「おはよー!」と言うやたらテンションの高い声が響いていたのだが、今日は至って平和。
耳に優しい穏やかな朝。
ーーそうだった……
京香は黙ってコーヒーを淹れた。
それから、パンをトースターに突っ込む。
スムーズな作業。
ゆっくりと朝食をとった。
久しぶりの落ち着いた朝のひと時。良太が来てからというものの、手際の悪さを突っ込んだり、指導を入れたり、どうでもいい話をしたりで慌ただしかった。
ふと時計を見る。
出勤の時間まで後15分以上もあった。
時間が経つのがやけに遅い。なんだか手持ち無沙汰だ。
ーーもう一杯コーヒーを飲んでいこう……
コーヒーメーカーには有り余るほどのコーヒーが残っている。
もう一杯どころか、後、二、三杯分はありそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!