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ーーうっかり二人分淹れるなんて。
京香は小さく舌打ちをする。
ギリギリまでウチでグデグデしていた。
会社になんかいく気がしない。
それに、遅刻したところでサボったところで何の影響もない。
そんなことがわかってて、出勤するのも何とも億劫なことだった。
またウンザリするような一日が始まる。
窓もない地下のジメッとした一角(倉庫の隣りなのである)で内田氏の嫌味を聞きながら一日を過ごすのだと思うとそれだけで気が滅入る。
京香以外の課の面々は、こんな状況に慣れてしまっているのか、皆、適当に時間を潰してやり過ごしている。
彼女以外はみないいトシをしたおじさんで、仕事に対して関心もなければ、やる気もないようだった。
誰かがパソコンをチェックして声をあげた。
「営業統括部から電球の催促が来てるよ。誰だよ、ほっといたのは」
皆が一斉に京香に目を向ける。
ーーえ!? 私?
「いつ請求が来てたんですか?」
「昨日の夜、入力があったみたいだ」
ーーそれ、退社した後だよ。
「あー、始末書書かされるよー」
またちらっと京香の方に視線が向けられる。
「私が、ですか?」
「決まってんでしょ。始末書3回書かされたら、いよいよ肩たたきだからね」
内田氏がニヤリと笑った。
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