異変

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ーー……そうか、そういうことか。 京香は内田氏の表情から何が起きたのか察知した。 本社内の各部署から請求されてきた備品をその日のうちに迅速に届ける、というのが備品課の業務内容の内規になっているのだろう。 次の日まで放っておくなんてとんでもない、というわけだ。 しかし、夜の8時に請求があがってきているのをその日のうちに対応しなければならない、などというのはめちゃくちゃだった。 別にフロア全ての電球が切れたわけでもないし、次の日になったって全然問題ない。 だから、こんなルールは備品課の課員を減点するためのナンセンスな決まりでしかない。 リストラ候補が飛ばされる部署、というのは本当だったのだ。 ここの部署に飛ばしてロクな仕事を与えない。 凹んで無気力になっていくところに、無理難題をふっかけて始末書を無理やり書かせて、辞めさせる口実を作る、というわけだ。 さすがに表立ってクビにするのは憚られるから、このような姑息な手が取られているに違いない。 内田氏を始め、ここにいる人たちは、恐らく、今回のように事情のわからない誰かに責任を押し付けてのうのうと生き延びているのだろう。
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