異変

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それから、どこをどうやってマンションに辿りついたのか、京香はよく憶えていない。 秋山から聞かされたのは、 少し先だけど、年明けの異動で海外赴任になりそうなこと、その時についてきて欲しいこと、だからちょっと早いけど、仕事が嫌なら今のタイミングでいっそ辞めてしまって結婚して赴任の準備をしたらいいんじゃないか、と思ったこと、 そんなことをつらつら考えていたら、すぐにでもプロポーズしたくなった……というようなことだった。 もらった指輪を手にはめてみれば、誂えたように指にピッタリで、かんぱーい!などと言いながら何杯も飲んだのであった。 久々の明るい出来事。 人生、万事塞翁が馬。 こうなってみると、備品課への異動は、秋山と結婚するための神様の思し召しだったのかもしれない。 心置きなく会社を辞めてしまってもいいように。 結婚して海外でバリバリと働く夫(エリート)を支える。 その間、自分のやりたいことをじっくり見つめるのもいいかもしれない。 いいかもしれない!! 素晴らしい人生ではないか!? 泊まりに来る?と言う秋山の誘いを断って、京香がマンションに戻ったのは、さっさと退職届を書いて、引越しの準備をしたいからだった。
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