異変

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内田氏の顔がチラチラと頭に浮かぶ。 結婚して退職する、なんて言ったら、あのイヤミな内田氏はどんな顔をするだろう、と想像するだけで溜飲が下がる思いだ。 ーーこうなったら、一刻も早く会社を辞めてやる!   溜まりに溜まっている有給を全部消化して、その間に結婚式の準備をすればいいし。   それから渡航準備もある。   アレ? 拓人さん、どこに赴任になるか、言ってなかったなー……   もう、英語圏じゃないかもしれないから、ちゃんと言ってくれなきゃ困るじゃない! 語学の勉強もしなきゃいけないしね。 もうあんな部署で茶など汲まずに済むかと思うと、それだけでせいせいする。 結婚してしまえば、仕事を辞めてしまっても何とかなるだろう。何と言っても相手が秋山なら何の心配もない。 結婚すれば人生の悩みが全て解決しそうだ。 あふれ出る笑みを抑えることができなくて、マンションのドアを開けるなり、京香は思わず叫んだ。 「残念でしたー!! ついに結婚することになりましたよー、良太!!」 ーー早く出て行ってちょうだいねっっ って、続けようとして。 良太はもういないんだ、ということを思い出した。 家の中は真っ暗だ。玄関の明かりをつける。 「追い出す手間が省けてちょうど良かったよ」 その呟きにも返事がなかった。
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