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「あーー、それより、子犬クンはどうなったのよ?
自分ばっかりいい思いしちゃってさ」
それがね、と結衣が来た時の事情を話すとケイコはがっかりした顔になった。
「京香のマンション出て行っちゃったの? あー、楽しみにしてたのになーー!」
「何、そんなに楽しみにしてたの?」
「そうよー。 私は癒されたいのよー。
上から目線のエリート男なんてイラネ。ストレス倍増するだけだよ」
「……疲れてるねー。 財務省のキャリアにもいろいろ苦労があるってことだ」
「そうそう。ま、私は男に幻滅してるからね……結婚なんてゴメンだけど、アンタは私の分まで女の幸せを満喫してちょうだい」
言葉は悪いがケイコは京香の結婚を心から喜んでくれているようだった。
ケイコと話しているうちに、「結婚」が少しずつ現実味を帯びてくる。これからのことを話したくて、京香は秋山に連絡した。
が、しかし、
意外にも。
返事がすぐに返ってこなかった。
もともとの仕事もある上に、京香の業務もまるっと引き継いでいる。
きっと忙しいのだろう。
遅くなってもいいから、仕事が終わったら連絡を返してほしい、とテキストを送っておいた。
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