異変

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入ったところで、部屋の中に入れるわけでもないのだが、取りあえず様子を見に行く。 玄関のところまで来たが、部屋の中が真っ暗で全く人気がない。 それだけじゃない。 何となく違和感を感じた。 んーー何だろう、としばらく考えて、窓にカーテンがないことに気づく。 やっぱり何かおかしい。 そこにいたところで埒があかないし……なんて思っていたら、隣から人が出てきた。 初めて見かけるが、40代ぐらいのいかにも主婦、と言う感じの女の人だ。 ちょっと迷ったが、思い切って声をかけてみた。 「あの……ここに住んでる秋山さん知ってーー」 話を続けようとしたら、その女の人は、ああ、と大きく頷いた。 「秋山さんね、急に引っ越されましたよね。どうしたんですか?」 「え?」 わけがわからず呆然としていると、女の人は続けた。 「昨日、急に引っ越すことになりました、って、いきなり業者が来て、荷造りしだしたからビックリしたの何のって。  いきなりなんですもん。もう、あんまり急なんで夜逃げかと思ったぐらい」 「そう……ですか」 何のことを言っているやら……それきり京香は口をあんぐり開けたまま絶句した。 ーー引っ越し……引っ越し……   引っ越し……?   引っ越しーー!?
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