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本当は、結衣みたいに、誰もが羨む素敵な男の隣りでウエディングドレスに身を包んでにっこり微笑みたかった。
周りの羨望視線とホウーッというため息を感じながら祝福されたかった。
そりゃ、結衣とは違って、「イカトウ」なブスかもしれないけど、でも、京香だって乙女なのだ。
女は、どんな容姿でも乙女なのだ。いくつになっても乙女なのだ。
素敵なナイトにエスコートされたいのだ!!
しかし、京香はそんな気持ちをずっと封印していた。
そして、結衣のことを、バカにして、勝手に見下して、
男に相手にされない自分を認めるのが悔しくて……強がっていた。
結衣が浮気された、って聞いた時、正直ザマーミロ、って思った。
ちょっと可愛いからって人生全てうまくいくはずないだろ、ってバカにしてた。
必死になって仕事を探してるなんて考えもしなかった。男に頼って美味しく生きることしか考えてないヤツだと見下してた。
そう思うことで、必死にプライドを保っていた。
……保てると思っていた。
ーーでも、結局、私だって同じじゃん!
仕事から逃げ出すように辞めて、男に捨てられて!
京香は大声で泣き出していた。
まるで三才の女の子のように。
感情をむき出しにして、わんわん泣いていた。
だからだろう。
玄関の鍵がガチャガチャと音がするのに京香は気がつかなかった。
「京香さん?」
びっくりして声をあげた良太と目があった。
大声で泣いている声を聞きつけて部屋に入ってきたのに違いない。
ーー良太!? 何で!?
京香は狼狽した。
良太には一番見られたくない姿。
男に騙されて、バカみたいにビービー泣いている姿。
しかも鼻水垂らしながら。
それだけじゃない。
髪の毛はボサボサで顔だって泣きすぎてむくんでいる。
しばらくお風呂にも入ってない。小汚い格好でほのかに悪臭が漂っている。
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