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途端に姿見に自分の姿が映る。
ひどい格好……
自分でいうのもナンだが、ヤケクソになったブスなんて見れたものじゃない。
ーーこの状態で良太に抱きしめられていた!?
急に我に返って恥ずかしくなってきた。
穴があったら入りたい、とはこのことだ。
「うわー! うわー!!」
わけのわからない叫び声をあげて家の中をウロウロと歩き回る。
しかも着ているTシャツをつまんで臭いを嗅いで見れば、かなりビミョーな臭い。
「いやー!!」
一層大きな叫び声になっていた。
夢だ、夢! これは悪夢に違いない!!
不意に耳元で良太の声が聞こえてきた。
「大丈夫だよ。大丈夫だから」
……夢じゃない。
京香ははっきりと覚えている。
良太の胸の鼓動。背中で感じていた手の動き。耳元で慰めてくれた声。
ーー……大丈夫。私は、大丈夫だ。
突然お腹がグーと鳴った。
すでに夜中。
そのまま帽子とコートをかぶってコンビニに行く。おにぎり三つとお茶を急いで買って頬張った。
***
久しぶりにぐっすり眠った。
目がさめると憑き物が落ちたように爽やかな気分。
また、耳元で良太の声が聞こえた。
「大丈夫だよ。大丈夫だから」
穏やかな明るい囁き。
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