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勢いよくベッドから飛び出す。
相変わらずひどい格好の自分の姿が鏡に映っていた。
ーーまずいよね、コレ。
最悪のブスから普通のブスに戻んなきゃ。
すうっと深呼吸をする。
良太の手の感触を体が覚えていた。背中がじんわり温かい。
そこからエネルギーが体内に浸透していく感じがする。あたかもスポンジに水が染み渡っていくように。
気力がじわじわとチャージされていくのがわかった。
また、お腹がグーと鳴った。
ーーよし!
京香はお風呂場に飛び込んだ。
シャワーの栓をぎゅっとひねる。熱いお湯が勢いよく流れ出た。
体の中にあるいらないものも一緒に流しだそう。
恨みとか僻みとか。
身体中を念入りに洗う。
頭のてっぺんからつま先まで。そうして気分を一新したかった。
持ってる中で一番華やかな服に着替える。
ドライヤーで髪の毛を乾かして、丁寧に時間をかけてメークした。
鏡の前で自分の姿をチェックする。
ーーよし! 大丈夫。
私は綺麗なブスだ。惨めなブスじゃない。
京香は家を出ると近所にある、ずっと行きたいと思って気になっていたカフェに入っていった。
店の前はウッドデッキになっていて柱にはブドウの木が絡ませてある。夏の間はブドウの葉が涼しげな木陰を作っていて気持ちが良さそうだった。
色とりどりの花が植えられた鉢が店の周りを取り囲んでいる。
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