京香、絶対絶命

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ゆったりとした時間が流れているそのカフェのテラスに腰を落ち着けた。 一人で時間をかけて楽しむ優雅な食事にふさわしいブランチを頼む。 国産の小麦を使ったこだわりのくるみパンにオーガニックの新鮮な野菜。 放し飼いをしている鶏が産んだという採れたての卵には自家製のベーコンが添えられていた。 旬のフルーツを贅沢にのせたヨーグルト風味のミニババロアにコーヒー。 ババロアの最後の一口を食べ終わる頃には、すっかり心も体も落ち着いていた。 コーヒーのマグを握った手元に目を落とすと、薬指にはまだリングをはめたままだった。 キラキラ光る婚約指輪をじっと見つめる。 …… ………… ーーあんなヤツに騙されるなんてホント、私ってバカだ。   東大の名が泣くよ。 自虐的なツッコミをする余裕さえ出てきた。 ふっと考える。 ーーでも、ちょっと待って。   アイツはそもそもどうして私なんかにコナをかけてきたのだろう……? 奇妙といえば奇妙だった。 京香の記憶する限り、秋山の方が積極的だったように思う。 そもそも、京香は秋山なんかに相手にされると思ってもみなかったのだから、自分の方からは何もアクションを起こしていない。 秋山の方が口説いてきたことは間違いない。それも結構情熱的に。
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