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いわゆるヤリ逃げしたかった……だけ?
そう考えると腹が立つが(まんまと騙された自分に一番腹が立つのだが)、だけど、だったらなぜわざわざ京香を選んだのだろうか。
周りには京香よりも若くて可愛い女はたくさんいたし、秋山なら選びたい放題のはずだ。
男女のことはよくわからんしなー……なんて思っていたらエリカの顔がポッと頭に浮かんだ。
エリカに話したら、彼女はなんと言うだろう?
そう思ったら、すぐにでもエリカと話がしたくなって、京香は席を立った。
マンションに戻る途中。
角を曲がったところに質屋があるのに気がついた。
いわゆるイマドキの、ブランドもののバッグだかスカーフだかを引き取ってくれたりするような店だ。
そんなものは一つも買ったりもらったりしたことはなかったので、今まで京香にはとんと縁のない店だった。
ーーどうせなら。
どうせなら売ってしまえ。
勢いで中に入る。ためらいなど全くなかった。
店のおじさんに指輪を差し出した。
「これ。売ってしまいたいんですけど」
「ちょっと拝見させていただきますね」
おじさんはルーペを取り出して、指輪をじっくりと鑑定し始めた。
「……」
おじさんは無言でじっくりと観察している。
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