京香、絶対絶命

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しばらくして困ったような顔で京香を見上げた。 「……大変申し上げにくいのですが、これはダイヤではないようです」 「あ、そうなんですね」 さして驚いたような顔をしない京香に店のおじさんは少し戸惑ったようだ。 「どう、されますか? お引き取りするなら……300円ほどになりますが」 「……」 自分の価値は300円? 京香ははぁとため息をついた。 「いえ、結構です」 指輪を受け取って、店を出るとその場で空高く放り投げた。 綺麗な放物線を描いて道路の真ん中に落ちる。 京香があっと思う間もなく、走ってくる乗用車に潰されてぐしゃぐしゃになった。 指輪の石は木っ端微塵に砕け散った。 大きくキラキラ光っていたその石は、ガラスだったのだろう。 *** 「何はともあれ、五十嵐主任の元気そうな顔が見れて安心しましたよー!  急に異動になったと思ったら気がついたらフロアからいなくなってたし、連絡もしてくれないなんてひどいじゃないですか?」 「ごめん」 「ごめんで済めば警察はいらないんですよ。  ここは、絶対五十嵐主任におごってもらいますからね! アタシを心配させた罰です」 エリカが大口を開けてステーキの塊を口に放り込んだ。
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