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「そこはちゃっかりおごってもらうつもりなんだ」
「それはそれ、これはこれ、ですからねー」
にっこりと極上の笑みを見せて、エリカはまた肉の塊を放り込んだ。
この子、絶対ロールキャベツだ。
柔らかな甘みのあるキャベツの下にはスパイシーな肉の塊が。
「やっぱり騙されたってことだよねー……」
「結婚詐欺? とかって言うんですかね、この場合も」
「詐欺」
ぐさりと突き刺さるその言葉。
薄々わかっていたとはいえ、第三者に「結婚詐欺」と認識され、京香は苦い粉薬が口の中に広がっていくような気持ちになる。
「それにしても、このアタシだって全然気づかないぐらいでしたからね、同棲の話が出るまでは。
秋山のやり口は完璧でムカつきますよ!」
エリカでさえそんな風に言ってくれるのがせめてもの救いだった。
「だけど、何で私を狙ったんだろう?
別にお金を取られた、ってわけでもないし、の割に、何かやけに手が混んでない?」
「確かに、そう言われれば不思議ですよねー」
エリカも首を傾げている。
「エリカなら何かひらめくと思ったのになァ。
ステーキ食べてるんだから何か考えてよ」
「そんな、いきなりの無茶振り。
でも確かに騙すって言ったって、秋山さんは何のトクもしてないんですよねぇ?」
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