572人が本棚に入れています
本棚に追加
忙しいだろうに、いつも笑顔でデータの入力を代わってくれていた秋山。
そんなのは京香にやらせるような仕事じゃない、と言って。
京香が過去の売り上げや粗利のデータを詳しく分析しようとすると、秋山は、問い合わせておくよ、と言って、気がつけばいつも資料を持っていってしまっていた。
親切に業務を手助けしてくれているものだとばかり思っていたが、
もし……私に知られたくないために取り上げていたのだとしたら?
エレクトロニクス事業部には何か秘密がある……?
エレクトロニクスの桑原課長代理はいつも「京香」に数字を入れさせようとしていた。
京香に対する嫌味だとばかり思っていたが、もしも、他の意図があったのなら。
もし……課長代理が「京香」に何か伝えようとしていたのだとしたら……?
元、エレクトロニクスの営業企画にいたエリート幹部候補生などに、ではなく。
むしろエリート幹部候補生に気づかれないように。
桑原とのやり取りを思い出す。
秋山の名まえを出した途端に、大丈夫だと言い出した桑原。
京香は、桑原は秋山に頭が上がらないのだとばかり思っていたが、秋山に内緒にしておきたい何かがあったのだとしたら……?
京香はあまりのことに体がぶるぶる震えた。
自分に言い聞かせる。
慌てるな。とにかく落ち着け。
時間は十分にある。
よく考えて正しい結論を導き出せ……
最初のコメントを投稿しよう!