言うは易し、と言うけれど

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かなり厳しいですねぇ、というのが、コンサルタントの谷原が京香に向かって吐いた第一声だった。 目の前の求人情報に目を通しながら、憮然とした思いで谷原の話を聞く。 コンピュータで検索をすると、ざっと何十社もの求人が出てくるのに、厳しい、と言われても即座には納得できなかった。 「求人はいろいろあるように思えますが? 大体、今失業率はとても低いですし、空前の人手不足と言われてるじゃないですか?」 「そうなんですけどね、五十嵐様のご希望されているような、事務・管理職のような職種は希望される人も多いんですよ。  この、経理課長相当クラスですと、大手で10年、15年職歴のある男性社員が殺到するんですよ。中には、大手で部長をされてた、なんて方が心機一転、新天地を求めて応募してくるようなケースもありますし」 リストラ対象になったオヤジが慌ててなりふり構わずやってくるのか? そんなことが頭をよぎる。 GECだって、リストラ候補を飛ばすための備品課などというのが存在している。 そこに飛ばされた社員は、遅かれ早かれ転職を考えるようになるのだろう。 事実、備品課の社員はしょっちゅう退職していく。
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