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就職してから今までの6年間は何だったのだろう。
納得がいかず、どうしてもむすっとした顔になる。
京香の表情を見て谷原はため息をついた。
「まあ、五十嵐様がご納得されるところに応募されるのが一番だと思いますが……その際には転職活動が長引かれることを覚悟なさってください。
次のご相談者様とのお時間ですので」
捨て台詞を残して、男は立ち上がった。
マンションに戻る京香の足取りは自然と重たいものになる。
再就職の厳しさが現実になって迫ってくる。
前の部署のように自分の培ってきたキャリアを生かしたやりがいのある仕事につけるのだろうか……暗澹たる気持ちでマンションのエントランスをくぐった。
管理人さんと立ち話をしていたカネダさんに目ざとく見つかってしまう。
「よー、ねえちゃん。最近、全然良ちゃん見かけないけど、どうしたんだい?」
「……良太はマンションを出ました」
聞かれたくないことを話題にされてますますむすっとした顔になる。
とはいえ、隠し通せることでもないので、イヤイヤ返事をした。
「え!? ねえちゃん、良ちゃんを追い出しちゃったのかい?」
「いや、その、話合って、良太が出て行く、って合意したんです」
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