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「えーー本当に? 残念だなァーー。
良ちゃん、余程アンタに惚れ込んでたのになァ。
よくおのろけ聞かされてたんだよ、『京香さんはいっつも頑張って仕事してる! スッゴクかっこいいんだ』とかね。
ニコニコして『僕みたいなお荷物を担いでても平気のへのざなんだよー!』なんていうからさ、オレが『何、言ってんだい! 惚れた女の荷物になるなんて男の風上にもおけねーよォ』なんて説教してやったら、急に料理を習いだしたりしてなー。
考え足りないところはあるけど、素直でいいヤツだよなー」
「……それで、中嶋とかいう一人暮らしの女のところにチャラチャラ出入りしてるってわけですか!」
「え?」
カネダさんが驚いたような顔をした。
「……失礼します」
京香はそれだけ言うと足早にエレベータに向かった。
後ろからカネダさんの声が追いかけてくる。
「そんな怖い顔してるなら良ちゃんに戻ってきてもらえよ!
良ちゃんといると明るい気分になれるからさーー」
ーー何言ってんの、カネダさんってば。
アイツはただ単にいっつもヘラヘラしてただけだってば。
にこにこと機嫌よく笑う良太の顔が頭にちらつく。
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