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マンションのドアを開けると静かで真っ暗だった。
「京香さーーん! 面白いテレビやってるよーー! 一緒に見よ?」
「どう? ボク頑張って片付けようとしたんだよ……途中で昼寝しちゃったけど(ショボン)」
「ボク? ボクは愛をあげるよ!」
良太の声がこだまのように聞こえてくる。
ーーウソばっかり。
良太なんて調子がいいだけじゃないか。
あんなヤツ…… 女だったら誰だっていいんだ! 私には稼ぎがあるから近づいてきただけなんだから!
カウチに腰を下ろすと疲れがどっと出てきて、なぜだか涙もツツーと溢れてくるのであった。
「大丈夫、大丈夫だから」
また、良太の声が耳元に届く。
ーー大丈夫、なんて無責任なこと、言わないでよ!
そばにいないくせに。
何にも言わずにふらりと出て行ったくせに!!
***
最悪である。
難航しているのだ、(再)就職活動が。
最初こそ気合を入れて、前向きになることができたものの、あまりの厳しさにここのところさすがに意気消沈していた。
コンサルタントの谷原が言った通り、今までのキャリアが活かせそうな職務となると、どこから湧いてくるのか、応募者が殺到するらしい。
京香は面接までもたどり着けなかった。
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