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はああーー
一体、いくつの企業からノーを突きつけられたことか。
20社を過ぎたあたりで数えるのを辞めた。
ため息しか出てこない。
薄暗い部屋の中で谷原からのメールを読む。
どうせまた……と投げやりな気持ちで開けたら、面接が決まった、という知らせだった。
思わず拳を振り上げガッツポーズをする。
「やったぁ! 良…」
太、と言いかけて、我に返る。
ーー今のは何!? なんで良太の名まえが飛び出すの!
衝動的な自分のつぶやきにうろたえた。
ーーカネダさんが余計なことを言うから、ちょっと思い出しただけ。
それだけ!!
ほんっと、それだけなんだからね!!
誰に言い聞かせているのか、京香は心の中で思い切り否定する。
それなのに、ふわりと抱きしめられた感触も思い出して一人顔を赤くした。
ぼーっとしていたらいきなりケータイが鳴った。
谷原からである。京香は急いで電話に出た。
「五十嵐ですが」
「メール、見ました? パシフィック・ホールディングスさんなんですけど、今日の5時から面接したい、って連絡来たんですが、どうしますか? 行けます?」
「今日? 今から? 5時ですか?」
時計を見ると3時過ぎである。
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