言うは易し、と言うけれど

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「はあ……」 京香が当惑しながら面接官に近づくと、面接官は京香の手をいきなり握りしめた。 「な、何、するんですか!?」 「……これくらいでビビるようじゃあ融資お願いなんて無理じゃないのー?  ホラホラ。  若い女何だからさー、可愛くニコニコして有利な融資を引き出すぐらいのことができなきゃ、若い女を採る意味ないじゃないの? アンタだって、東大出てるんだから、それぐらいの事、わかるだろ?  ま、アンタはちょっとトウが立ちすぎてるから、そんなことされても銀行さんも返って気持ちが悪くなるかもしれないけどさー」 あまりの言い草に頭が真っ白になっていると面接官はぴしゃりと言った。 「ほらほら、銀行さんから融資を引き出せないようなヤツを採用するわけにはいかないんですよ、ウチとしても。  今回は残念ですが、ご縁がなかったということで。  まあ、五十嵐さんは? 東大をご卒業なさっていて? GECなんていう立派な企業に勤められた経験もあるわけですから、わざわざウチのような会社でなくてもすぐに立派な会社にお勤めされることと思いますが……」 「失礼ですが」 京香は、ぷっ、くすくすという笑い声を挟みながら長々としゃべり続ける面接官の話を遮った。
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