言うは易し、と言うけれど

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京香は立ち上がるとそのまま向きを変えて出口に向かった。 「ちょ……、君! 無礼にもほどがあるじゃないか! 女のくせに!!」 後ろで面接官が喚いているのが遠くで聞こえた。 ーー女のくせに?   男なら無礼にならないのか?    それともブスには何を言ってもいいと思ってるのか? 「ふざけんな!」 帰り道、空に向かって大声で叫ぶ。 周りの人がぎょっとして、一斉に京香の方を振り向いた。 ドスン、ドスンと足を踏みならして歩くが、それでも怒りが収まらない。 マンションに戻ってからも、家の中をドタドタと歩き回っていた。 全く気が晴れない。 一人でパーっと飲みにでも行ってしまおうか、などと考えていたらケータイが鳴った。 谷原からだ。 チッと小さく舌打ちして京香は電話に出た。 電話に出るなり、男はキンキンと叫び声をあげる。 いきなり耳元でがなり立てられて、京香の耳はキーンとなった。 「先方に何、言ったんですか? あんな失礼なヤツは初めてだ、二度とウチの紹介で面接はやらない、とずいぶんお怒りでしたよ!! どうしてくれるんですか?」 まるで京香が悪いような言い方にカチンときた。
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