言うは易し、と言うけれど

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その場にへたり込んでいると今まで言われた数々の心ない言葉がまた亡霊のように蘇ってきて、京香を突き刺した。 「成績『は』いいんだけどねー」 「迷惑なんだよ、このブス」 「たまには若くて綺麗な女の顔を拝みたいと思ってたんだけどな……期待はずれだったかな」 悪意のある言葉の数々が京香に取り付いて離れない。 ……ック、ヒック。 嗚咽がこみ上げてくる。 京香はすすり泣きをしていた。 ーー悔しい…… 悔しくて、情けなくて、……悲しかった。 恋愛を諦めて、仕事一筋でやってきたのに、その結果がこれ。 仕事の方でも壮大なるダメ出しをされた。 しかも、仕事でも、女の場合、結局モノを言うのは見た目であることがイヤというほど痛感させられる。 京香はどうしようもない虚無感に襲われて、ぼーっと壁の時計を見つめていた。 「……京香さん?」 背後から例の聞き慣れた声が聞こえてきて、京香はビクッと肩を震わせた。 「……良太? ……どうして?」 それだけ絞り出すのがやっとだ。 後は、無言で良太を見つめていた。 ーー本物?  「なん……で、いっつも……突然なのよ……! もーー!」 ホント、間が悪い、というのはこういうことを言うのだ。 前回と言い、今回と言い、どうして、こんなみっともない姿をしてる時に限って現れるのだろう!!
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