言うは易し、と言うけれど

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「来るな、来るな、来るなーー! 帰れーー!!」 ヒステリックに金切り声をあげても、良太はゆったり京香に近づいてくる。 頭をぽりぽりと掻きながら、照れくさそうな声を出した。 「この前さ……忘れ物を取りに来ただけだったんだけど、京香さんがあんまり悲しそうにしてたから……気になっちゃって、また、来ちゃった。  大丈夫? 元気でやってる?」 ーー気になって? 私のこと、気にしてくれてたの?   どうして?   私、良太にあんなひどいこと言って追い出したんだよ!?   なのに、どうして、気にしてくれるの…… ぼろぼろと溢れてくる涙を止めることができない。 「だ、大丈夫、じゃないわよ。 最悪よォ! どこに行ってったのよ、今まで!」 京香は良太に近づいて行って良太の胸をどんどんと叩いた。 「ちょ!? どうしたの、京香さん。 落ち着いて!?」 「落ち着けるかー!!」 さらに強く拳を握りしめて力一杯良太の胸をポカポカ叩く。 「ア、アンタなんてねぇー、部屋を散らかすばっかで、一日中家で働かないでグデグデしてるだけだし、何の役にも立たないくせに、肝心な時にはいないんだから、困るじゃないのよーー!」 「京香さん……」
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