言うは易し、と言うけれど

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良太の方がプンプン怒っている。 「なんでアンタがそんなに怒るのよ?」 「いや、だって。 京香さんをあんなに悲しませるなんて」 「……もう、いいよ、この話は」 なぜか京香の気持ちは大分晴れていた。 ーーあんな男、ちょっと高い授業料だったけど……   あんなくだらない男、どうでもいい。 自分でも驚くほどすっきりした気持ちになっていた。 「よし、僕、京香さんを助けるよ!」 「へ?」 また、調子のいいことを言って、と思っていたら、驚いたことに、良太はその日、近くのコンビニでのバイトを見つけてきたのである。 「っていうか、アンタ、今の今までグータラだったくせに、いきなり」 「だって、今、京香さん、困ってるじゃん、すごく。 だから、助けたいんだよ」 「……」 「ボクの大事な人だからさ、助けたいんだよ、困ってる時には」 ーーつーか、だったら最初からバイトしてくれよ!!    最初からちゃっちゃと家を片付けてくれよー!!   私は最初から困ってたんだじゃー!! ……とツッコミたいのは山々なのだが、今更言っても仕方のないことなので、京香は黙っておくことにした。 やっぱり、良太はどこか抜けている。 「そりゃあ、京香さんみたいに高給取り、ってわけにはいかないけど、とにかくないよりはマシでしょ? だから、しばらくここで一緒にいていい……?」 「あ、うん、まあ、働くっていうなら……」 なんだかよくわからないままに同居生活が再開されたのである。
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