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「……えー、急に言われても」
「……だって、京香さんが怒っちゃうし」
「……それにボクだって、明日、朝6時からシフトが入ってるしさー」
電話の内容から察するにどうやらまた、結衣が杏の面倒を頼んでいるらしい。
耳をそばだてて聞いていると、どうやら良太が押し切られそうだ。
どうしてこうも姉ちゃんには頭が上がらないのか。
電話口で良太が困り果てていた。
イラッとして横から電話を取り上げる。
「アンタねー! 何にもしないグータラだとか言って良太を追い出したくせに、都合のいい時だけ使うんじゃないわよッ」
「は? 何? アンタこそ、誰? 京香?」
「そうよ! 良太はね、朝からバイトが入ってるから無理。
絶対無理なんです!!」
良太に変わって強く言い返すと結衣のため息が聞こえた。
「何、なんでベビーシッターがいるの? また仕事の面接?」
「そう。それ以外に何がある、っていうのよ。
もー、ホント参る。
仕事見つけないと保育園にも入れてくれないし、これじゃ、仕事見つけられないっちゅーの」
そりゃ、結衣の自分勝手さには腹が立つ。
ちゃらちゃらして結婚だの離婚だのこれみよがしに騒いでいることも鼻につく。
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