華麗なる復讐

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杏を受け取りながら、良太が渡したのはコンビニのお弁当だった。 「店長がお腹すいてるだろうから、持って行ってあげな、って」 「……疲れた」 杏を良太に渡して、お弁当のふたを開けた。 ただの生姜焼き弁当。 しかし、どんな高級レストランの食事より美味しく感じられた。 そういえば、秋山はいろんなレストランに連れて行ってくれた。 お洒落なお店や美味しいお店。 確かに、あれはあれでワクワクするようなドキドキするような素敵な経験だった。 だけど、今は、このお弁当が何だか心に美味しい。 良太の(店長の?)優しさが伝わってくる。 ーー私、今まで何を求めていたんだろう。   ちょっとカッコよくて仕事ができてスマートだからって、秋山さんと付き合うことになって舞い上がってたけど、私は、本当に彼が好きだったのだろうか?   勉強や仕事だって……自分を良く見せることばかりにこだわっていたんじゃないだろうか。   ブスだ、ブスだ、って言われて、見返すことばっかり考えてた気がする……   本当に自分に自信があったんなら、ムキになる必要なんてどこにもなかったのかも……    周りからの評価なんて全く気にせずどこまでも自分らしく振る舞う良太を見ていると、他人を見返すことばかり考えていることが少々滑稽に感じられる。
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