華麗なる復讐

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その良太は……といえば、のんびりといないないばぁなどをやっていた。 「京香さん、見てー。杏が真似している」 声をかけられて二人の方を見る。 杏は、何がおかしいのか、良太の真似をして自分の手で自分の顔を隠していないないばぁを一人でやってけらけら笑っていた。 何回も何回も飽きずに同じことを繰り返してその度にけらけらとくすぐったい笑い声をあげる。 何の不安もない、楽しそうな表情。 「可愛いなぁ……」 京香は無意識のうちに呟いていた。 「本当だねーー赤ちゃんがいると幸せな気持ちになるねぇ」 良太も目を細める。 こんな風に穏やかな、落ち着いた気持ちになったのはいつぶりだろう。 京香は、杏ににっこりと微笑み返した。 結局、良太がバイトに戻っていく頃に、結衣が現れた。 結衣は、家の中を見回してその荒れ具合に呆れた。 「何、これー。いくら赤ちゃんがいたからって酷すぎない?」 ときっちり京香を下げてくる。 ーー相変わらず嫌味な女だ。   初めてだからしょうがないじゃん…… と、心の中でぶつくさ文句を言っていると、 京香の驚いたことに、結衣はそのまま片付けを手伝ってくれた。 結衣は、プイッと横を向いて「今朝は助かったからね」と怒ったように言い訳をする。
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