華麗なる復讐

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いつか秋山が言っていたように、エレクトロニクス事業部は何としてでも新工場を作って業界内での巻き返しを図りたかった。 しかし、ここ数年競争力を失ってきていたエレクトロニクスは他社の競合品に劣るものしか作れず業績は下がってばかり。 特に、アジア勢の廉価品には太刀打ちできない。 当然、工場の予算など望むべくもない。 それどころか、下手したら事業部そのものが売却される可能性だってある。 焦った事業部は無理を重ねていった……それだけでは間に合わず、決算を乗り切るために不正会計に手を染めたのではないだろうか。 いや、不正会計などという緩い表現ではすまないはずだ。 おそらく、粉飾決算 ……粉飾が行われている。 だから……だから、数字に違和感を感じていたのだ。 秋山がどこまで関わっているのかはわからない。 しかし、秋山はもともとエレクトロニクスの営業企画から来ている。 内情をよく知るうちの一人であることは間違いないはず。 水曜会議に参加していたのだって肩書き以上の権限があるからなのかもしれない。 隠された会社の闇を知る人物の一人だったのだろう。 秋山が財務に来たのは、この闇を公にしないようにという密かな任務を負っていたのではあるまいか。 ところが、秋山が財務に来てみると、 数字をおざなりに見てるだけじゃない、重箱の角をつつくように細かいとこを見て、やたらと首をひねって「おかしくないですかねー」なんて言う東大卒の可愛げのない女がいた…… 秋山は、京香が不正を見破ることを恐れた。 そういう状況での突然の異動。 京香は自覚していなかったが、恐らく発覚一歩手前じゃなかったのではないだろうか? あるいは、何かを伝えたかった桑原と京香の接触を絶ちたかったのかもしれない。 それでなりふり構わず京香を飛ばした。 異動に納得していない京香が何か気づくのではないかとそれでも心配だった秋山は、最終的に結婚をエサに京香に会社を辞めさせた……
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