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「あれー! これ、タイプミスじゃないですかー?
売り上げが436円になってますよー?」
秋山が在席していないのを確認してわざと素っ頓狂な声をあげたらしい。
ぎょっとしたした課長のところに資料を持って行き、
「えーっと、正しい数字、資料室のファイルを見て確認しておいた方がいいですか?」
とすっとぼけて聞いたらしい。
適当なところがある課長は、チラリと資料を見て、
「ホントだ。数字が違うといけないから、確認しておいてくれ」
と、エリカにそのまま鍵を渡したのだった。
***
「最新の数字なんだから、まだファイルになってるはずないのに課長って相変わらず大雑把ですよねー。
アタシがすっとぼけて大声出したらすぐ騙されるんだもん」
エリカはすました声を出した。
課長は相変わらずだと、京香は思わず苦笑する。
部下を信じる、といえば聞こえはいいが、仕事を全て丸投げしてしまうようないい加減なところがあった。
特に、秋山が赴任してきてからは、全面的に秋山に任せてしまい、いわゆるめくら判を押すこともしょっちゅうだった。
エリカのことだから、課長や秋山の行動を綿密に計算した上での行動だろう。
さすがとしか言いようがなかった。
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