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ーーな、なにぃーー!!
京香は、カァッとなって自分が抑えきれず、ドアをそのまま掴むと怒鳴り込んだ。
「良太ーー! こそこそ隠れて、何、浮気しちゃってんのーー!!」
京香が中に踏み込んだら。
キッチンで包丁を手に野菜を切っている良太の姿があった。
隣りには、70歳はとうにすぎたであろう、白髪の上品なおばあさん。
……
…………
ーーどゆこと?
一瞬の空白の後、おばあさんがコロコロと笑い出した。
「あなたが五十嵐京香さん? 良ちゃんからいつもお話は聞いてますよ」
「……ハァ」
それだけ相槌を打つのが精一杯。
「ホント、残念だわ。私が、あと50年ばかり若かったら、良ちゃんといい仲になっていたのに」
中嶋サユリさんはいたずらっぽい顔をして、上品な声でウフフと笑う。
「……」
自分の勘違いに恥ずかしくなった。
「り、良太、こ、こんなところで何してるのよ、ちゃ、ちゃんと説明しなさいよ……」
「何してる、って見ての通り、ゴハン作ってるの。
サユリさんに、料理とか家のこと、イロイロ習ってたんだよー。
京香さん、いつか、いいお嫁さんになれるようにしろ、って言ってたじゃないか」
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