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仏壇にシャンパンを供えながら、サユリさんがしみじみとした声になる。
「子どもは二人とも海外なの。
だから、お父さんが死んじゃってからは、本当に静かでねぇ。
孫が遊びに来たみたいで、楽しいのよ、良ちゃんが来てくれると」
「ボクの方こそ、サユリさんのおかげで、美味しい料理が作れるようになったし。
すごく感謝してるよ、ありがとうーー」
それからも、シャンパンを飲んで、サユリさん(と良太)の自慢の料理をつつきながら、いろんな話をした。
遠くに住む子どもたちのこと。
最近はフェイスタイムで話したりすることもできてすごく便利だってこと。
それでも気軽に会えないのは寂しい、っていうことも話していた。
「大切な人が近くにいる、っていうのは本当に幸運なことよ」
サユリさんは目を細めてシャンパンを飲み干した。
このおばあさん、なかなかいける口のようだ。
サユリさんは料理が上手なだけでなく、話も上手で、
あっという間に時は経ち、京香が、最後のワインの最後の一口を飲み干してお開きになった。
立って、お皿を下げようにも足元がふらついて上手に歩けない。
「す、……しゅみません。飲みすぎちゃったみたいで」
ふらついた京香を良太がすかさず支えた。
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