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「で、そのお眼鏡にかなったのが、例のハゲ……」
何だかエリカが可愛くて思わずからかいたくなってしまう京香だ。
あれだけ玉の輿と大口を叩いていたのに、あっさりとそこらへんの男に恋に落ちてしまうのだ。
それでも、自分の直感と気持ちを信じる強さがエリカにはあった。
自分に誇りを持っているのだ。卑屈さが微塵もない。
結局、見た目とか学歴とか、収入とかそんなものに捕らわれているうちは大恋愛など程遠いのかもしれなかった。
「五十嵐先輩こそ、ニートを選んだくせに」
にやにや笑いながら、エリカがすかさず突っ込んでくる。
「いやっ、それは……!!」
京香が顔を赤くすると、それまで黙っていた良太が口を挟んだ。
「ボク、今はコンビニで働いてるからねー、ニートじゃないですよ」
エリカは良太の言葉にフンと鼻を鳴らした。
「コンビニで生活していけるか! もっと稼げる仕事しなきゃダメじゃん」
「うん……最近、そうかもなぁーーって思ってたとこ。
急にはムリだけど、ボク、頑張るから」
ーー何だ、何だ!? 何で急にやる気になってるんだ!?
二人の会話に一番面食らっているのは京香だ。
何だか、隣の良太が急に頼もしく見えてくる。
ーー子犬じゃなかった? い、いつの間に……
さっきのことを急に思い出して、京香は体がかあっと熱くなる。
「そ、それより、つ、続き。話の続きを!!」
「何、どもってるんですか、五十嵐先輩。やらしいこと、考えてたでしょう」
クククと笑いながらも、エリカは続きを話し始めた。
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