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「そんな……アタシは、五十嵐先輩が羨ましいですーー
アタシなんて頭も悪いし、仕事もできないから、早く、結婚して美味しいゴハンを旦那様に作ってあげたいなーなんて」
はにかんだような顔でエリカは言った。
秋山もそれを見てにっこり微笑む。
「吉岡って家庭的だもんなぁ」
「あ、いや、ただ、アタシは、愛する夫と子供がいるフツーの家庭に憧れてる、ってだけで」
「それが家庭的、って言うんじゃない?
吉岡みたいなコと話してると、こっちもほっとするよ。癒される、って言うか」
そこで、エリカはすかさず秋山に弁当を差し出した。
「あの……、実は、秋山さんの顔色が悪そうなんで、ちゃんとゴハン食べてるのかなーとか、心配になっちゃって……
勝手に作ってきちゃったんですけど、よかったらどうですか?
あの、アタシ、五十嵐主任みたいに頭良くないし、お仕事のお手伝いはできないし、これぐらいしか役に立てることがないんですけど……」
綺麗に包んだお弁当を差し出した。
女の子らしい、桜の透し模様のナプキンに包んである。
「マジでーー? いいの?」
「もちろんです! あーー良かった、受け取ってもらえなかったらどうしよう……って思ってましたから」
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