華麗なる復讐

82/86

570人が本棚に入れています
本棚に追加
/401ページ
***  すっかり酔いはさめている。  エリカが帰ってからも、京香はキッチンのテーブルでデータをずっと調べていた。  詳細に見ていけばいくほど愕然とする。  よくもまあごまかしきれたもんだ、とある意味感心せざるをえないほど、ひどい改ざんであった。 ーーこんな粉飾……知ったところでどうすれば良いのだろう。     京香はどことなくカビくさい臭いのする、湿った地下の備品課のことを思い出す。  主のように君臨していた内田氏。  仕事の出来る部署に異動になることはほぼなく、周りから白い目で見られながらも備品課に居座っていた。  年齢は50近くというところだろうか。  住宅ローンを抱えて子どもの進学だってあるのかもしれない。  恐らく一番お金のかかる時で、あんな仕打ちを受けながらも会社を辞めることができないのだ。  会社から必要とされていない、とわかっているにもかかわらずしがみつくしかない内田氏。  辞めてしまえば、GECのような体裁の良い、待遇の良い大企業に再就職することなど決して叶わぬ、ということは、誰よりも本人が一番自覚しているのであろう。  それは、内田氏よりもうんと若くてまだまだ先のありそうな京香でさえ、再就職することの難しさを実感しているのだから、ましてや賃金の高い内田氏が相応の職を見つけるなど不可能だ。
/401ページ

最初のコメントを投稿しよう!

570人が本棚に入れています
本棚に追加